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ファンシイダンス

ファンシイダンス
公開 1989年12月23日 
監督 周防正行
脚本 周防正行
原作 岡野玲子
出演者 本木雅弘、鈴木保奈美



【鑑賞前】期待:☆☆☆☆

監督は『Shall we ダンス?』で有名な周防さん。

原作は『陰陽師』で有名な岡本さん。

つ、つまらないはずがない。

なんかお坊さんのお話らしいんだけど、
前に見たような気もする。

でも、覚えてないから大丈夫だ。


【鑑賞後】評価:☆☆☆☆

朝、出勤のためいつも通りの道を通っていたら、
タヌキが車に轢かれて死んでいた。

タヌキは頭から血を流し、
道路の半分をふさぐほどぐったりと伸びて、
ピクリとも動かなかった。

登校途中の中学生がタヌキの死骸を避けながら、
それでいてガン見しながら学校へ向かっていく。

僕はタヌキの死骸を見ながら、
「朝からいやなもの見ちゃったなぁ」
「市役所の人が片付けてくれるんだろうか?」などと、
仏教徒のくせに慈悲の欠片もないようなことを考えていた。


この映画が作られたのはおそらくバブルの真っ只中。
日本全体がイケイケでみんなバカスカ金を使い、
資源を浪費していた時代だ。
そんな時代にアンチテーゼとして作られた作品だろう。

この映画はイケイケの若者が親の家業(お寺)を継ぐため、
地方の山寺へ修行に出かけるというお話だ。

主人公はお寺の儀式がオシャレな感じがして惹かれていくのだが、
結局は就職活動の一環みたいなものだった。
早く山を降りて恋人に会いたいと本心では思っている。

一緒に修行する仲間たちも、
「起床→座禅→粗食→睡眠」
という生活の中で「悟り」を啓こうなどと考える者はおらず、
うんざりしながらも、お寺を継ぐためだけに頑張っているのだ。
当然、お寺の住職も修行僧には偉そうだけど煩悩が垣間見える。

主人公の修行仲間が言った、「お前の親父、住職なんだろ?
本当に悟っているのか?」というセリフがとても面白かった。
「葬式仏教」に悟りは必要ない。


周防監督のユーモアが光る作品で、
たくさん笑えるように作られている。
ところどころ小津安二郎監督の『お早よう』を想起させるシーンもあった。

周防監督は僕にとって日本映画界最高のエンターテナーで、
僕が映画に必要だと思っている「テーマ」「ユーモア」「品性」の
全エッセンスを備えた作品を作ることができる稀有な存在だ。

しかし、この作品は監督の2作目ということもあったせいか、
「テーマ」が弱いのだ。

主人公が仏教の「修行」を積んで、どう変わったのかよくわからなかった。
主人公の中で芽生えるものはあったのだろうか?
映画を見ている感じだと主人公はあまり変わっていないように思う。
そこがテーマになったはずなのに。

『シコふんじゃった』は周防監督の3作品目で、
この作品の次に作られたものだと思うのだが、
舞台は違うもののストーリーはよく似ていて、
イケイケの若者がしぶしぶ相撲部に入るという話しなのだが、
ラストで主人公は自主的に相撲部に残るという決断をする。

『ファンシイダンス』では主人公は自主的に残ったわけではない。
この違いはとても大きい。

周防監督自身も『ファンシイダンス』を作り終えたときに
ラストの欠陥に気づき、次の映画では改善したのではないだろうか。

『Shall we ダンス?』では更に素敵なラストを用意している。

映画にとってラストをどうやって描くかというのはとても難しいことなのだ。

一番簡単なラストは主人公に死んでもらえばいいわけだが、
こういうラストが合わない作品もあるわけで、
主人公の人生の一部分を切り取って映画にし、
その後の人生は観客の想像にお任せしますといった終わり方が一般的だ。
しかし、どこで切り取るかは作者のセンスが大きく問われる。

僕の近所で死んだあのタヌキも、
タヌキの一生の中で素敵なところを切り取れば、
ナイスな映画になったことだろう。

僕にとってあのタヌキは、バッドエンドだったけど。


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